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このページは 2000.11.21 に更新しました

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営業・施工計画から現場管理まで


 

1.工程表作成に使われるソフト

1999年7月に社団法人建築業協会の施工部会から、現場情報化調査アンケート結果が報告されている。「工程表作成に使われているパソコンソフト」という問いに対して、図1のような結果になっている。

 

図1 工程表作成時の使用ソフト  (アンケートは157作業所(23社)を対象としている)



使用ソフトの分類は、Excel、JWCAD、CDPM、自社開発、その他の5種類に分類されている。全体工程表はネットワークで表現されるためExcelは皆無でJWCADが多く、月間工程表と週間工程表では ExcelとJWCADが上位にランクされている。施主・設計者・工事関係者に工事全体や部分的なスケジュールを分かり易く表現するという目的には、ExcelやJWCADが良く、工程表を見栄え良く作成することに主眼が置かれている現状を読み取ることができる。

凡例の3番目が、本報で紹介するCDPMである。市販されている工程管理用のパッケージソフトの中で唯一挙げられている。

CDPMのような工程管理用のパッケージソフトが威力を発揮するのは、工程の修正を頻繁に行ったり、資源の山積みやクリティカル・パスを計算したり、計画と進捗を比較する場合などである。これらの機能は、CDPMのような工程管理の専用ソフトでなければサポートされていないからである。 

2.CDPMの使用状況

CDPMChart Drawing system for Project Managementという名前で示されるようにプロジェクトマネージメントのための工程表作成システムである。

工程表の利用目的が異なれば、それぞれの活用場面で工夫が必要になる。そこで、CDPMの使用状況を、営業、施工計画から現場での施工管理までの場面で紹介する。

1.全体工程表の作成

営業段階では案件の概要に応じて臨機応変に工程表を提示する必要がある。顧客の要望により工程を修正したり、代案を作成するなどの俊敏な対応が求められる。このような場面で、全体工程を作成することを目的にして、CDPMをカスタマイズして使用している例から紹介する。

2は工事概要から各工事の実働日数を算出し、修正を加えてから、アロー型のネットワーク表現で全体工程表を簡便に作成するフローである。

最初に、工事概要入力として、延床面積・建築面積・構造・用途地下階数・杭の種類・山止めの種類など13種類をインプットする(図21)。これらのデータから、標準工期を算定する関数により、準備工事・杭工事・土工事・地下躯体工事・仕上工事・外構工事の7種の実働日数を算出する(22)

さらに、この標準工程表を工事条件や使用重機を考慮して、土工事・地下駆体工事・地上躯体工事・仕上工事の工程を細分化して実働日数を修正する。図2‐3は地上躯体工事の実働日数を修正するための画面である。結果として、図24のような全体工程表の「叩き台」を20分から30分で作成できる。これをベースに工程を修正したり代案を作成することで、顧客への俊敏な対応に貢献している。

CDPMOLEオートメーションという機能により、作図プロセスをプログラム化できるので、個別に作業線を入力するというような骨が折れる操作をしなくても工程表が作り込める。

 

図2-1 工事概要入力

(図中をクリックすると拡大表示します)

図2-2 実働日数修正 

図2-3 地上躯体工事の実働日数 

図2-4 全体工程表

(図中をクリックすると拡大表示します)

2. 月間工程表と週間工程表

図3と図4は安全管理用の月間工程表と週間工程表の例である。施工段階でこれらの工程表を要領良く作成するためには、CDPMの「印刷書式編集」と「印刷期間設定」の2つの機能を上手に使いこなすことが要件となる。 

組織的に運用するには、印刷フォーマットや作業項目などを用途別に標準として準備しておけば、現場で即戦力になる。 

 

図3 月間工程表

(図中をクリックすると拡大表示します)

 

 

図4 週間工程表

(図中をクリックすると拡大表示します)

 

(1) 印刷書式編集機能

安全管理用の書式として、予想される災害・防止対策・重点点検事項・記事など必要事項を記入する欄を設計する(図5)。文字や図形の書込みだけでなく、CADや写真のファイルを貼り付けることもできる。安全、品質、調達など工程表を作成する目的に応じた書式を登録しておけば、同じ工程表を異なる目的で利用できる。 

 
図5 印刷書式編集画面

(図中をクリックすると拡大表示します)

 

(2) 印刷期間設定機能

月間工程表で進捗をフォローして修正すれば、月間工程表から週間工程表を容易に作成できる。このことは、CDPMの印刷範囲を設定することで実現する。

図6は、月間工程表と週間工程表の印刷期間を登録・選択する画面である。同じ工程表の期間を指定して印刷することでデータの再利用が図れ、作成効率が向上する。 

図6 印刷期間設定

(図中をクリックすると拡大表示します)

 

3. 応用事例

CDPMの応用事例として、プロモーション工程・資源の山積み・計画と実績の比較の3例を紹介する。

(1) プロモーション工程

図7は、調達資材を段取りするためのプロモーション工程表である。各工事で調達する資材のタイミングを全体工程と関連させ、業者決定・製作図作成・承諾・製作の必要期間を示す工程表である。図2で紹介した全体工程表に連動した表現になっている。

調達資材をメニュー化し、全体工程とのリンク情報や必要期間をマスターデータとして登録し、OLEオートメーションでカスタマイズしている。 

 

図7 プロモーション工程

(図中をクリックすると拡大表示します)

 

(2) 資源の山積み

 施工計画段階では、揚重機の負荷、必要労務量、使用電力量、排出する建設副産物の量などを工程に沿って精度良く予測しておく必要がある。図8は、高層の建物で、内装・仕上工事で使用する資材の揚重回数を山積みした例である。揚重回数をシミュレーションして、最大利用回数とその時期を把握して、揚重機の性能や使用時期を決める根拠として活用できる。

 内装・仕上資材を揚重のタイミングによりA・B・C・Dの4種類に層別して、各々に揚重回数を設定している。CDPMにはCADと同様なレイヤがあり、各レイヤの工程表を重ね合わせて表現している。レイヤ別に揚重回数を入力しておくと、レイヤ毎に積み重ねて揚重回数を山積みして表示し、図8のようになる。 


図8 揚重回数シミュレーション

(図中をクリックすると拡大表示します。)

 

(3)計画と実績の比較

 CDPMのユニークな機能として、工程の表示をアロー型のネットワークと横線式のバーチャートの2種類をサポートしていることが挙げられる。工程の表現をレイヤ毎に変えることで、計画と実績の比較を判り易く表現できるので、進捗管理情報を関係者と共有するときに役立つ。

 

4. 使いこなすために習得したい機能

 パッケージソフトには厚いマニュアルがセットになっている。CDPMにも550ページにおよぶマニュアルが別売(6,000円)されている。マニュアルは辞書代わりに利用することになる。

 CDPMを上手に使いこなす上で、必要不可欠な機能を列挙する。
  1)作業線のコピー/移動/削除
  2)作業線の挿入/分割
  3)固定点の設定
  4)日付の設定
  5)オブジェクトの挿入
  6)他のWindows(R)対応ソフトへのコピー

 これらは、CDPMを自由に使いこなすためのマスターすべき最小限の機能である。 

3.CDPMの特徴と今後の展望

1.CDPMの特徴

CDPMの特徴をまとめると次のようになる。

  1)工程描画の処理スピードが速いので、操作にストレスがない。

  2)レイヤ機能により複数の工程表を重ねて表示でき、それぞれのレイヤ毎に表現方法を設定できる。

  3)OLEオートメーション機能により、目的に応じてユーザがカスタマイズできる。

  4)プロジェクトファイル、項目マスタファイル、印刷書式集ファイルが独立しており、各々に修正ができる。

 

2.今後の展望

工程表のデータフォーマットとして、CADにおけるDXFのようなデファクトスタンダードがない。国際的な標準化の動向にも着目して、工程データの交換や共有を合理的に行なえる環境を築くことが望まれる。

今後のソフトは、インターネットの環境でデータ交換やデータベースでの情報共有に対応できる方向で進化している。XML等のWeb技術によりデータベースと連動すれば、企業間や異なるアプリケーション間でのデータ交換が可能になる。汎用のブラウザをユーザ・インターフェイスとして、CDPMのこれまでの操作性を継承して機能が充実してゆくことを期待したい。 

【参考文献】

1)現場情報化調査アンケート報告書 社団法人建築業協会 施工部会
2)日本語工程システム CDPM ver5.0 パンフレット 金子建設株式会社

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